20 万 ! というと途方もないが、日本円に直すとたったの 66 円であった。
うーむチャイのグラスがこんな安いモノとは思わなかった。更に少し値切ったら 60 円になった。さすがにこの金額だと、支払うのに何のココロの葛藤もわいてこない。何だかあっけないい気分で店を出るのであった。
しかし、ここに、ドルとトルコリラとあわせれば 1 万円くらいの現金は持っているのである。それを全部出して、それでチャイのグラスを買い占めたらどうなるであろうか ? と考えざるを得ない。更に値切れば、単価 50 円くらいにはなりそうだ。すると 200 個は買えてしまう。それだけあれば近所の人や友人親せき一同に、心おきなく配りまくることができる。いやいや、それでもなくなりそうにない。どうやって持ち帰るかが問題なのだが …
そして夕食をとるため、そのへんの地元の人向けらしいトルコ料理屋へ。店先のテーブルでトルコ人のおじさん連中がビールを飲みながら大声で話しているが、店の中より外のテーブルの方が気持ちよさそうな夕方だったので、その中に割って入って座ることにした。すぐに店の人が出てきて、何を食べるか聞くので、トマトの入ったサラダ、ミネラルウォーター、メインの料理を次々にトルコ語英語ごちゃまぜで頼んだ。
そのとき …
自分がずいぶんトルコ生活に慣れてしまっていて、トルコ人のおじさんたちの中で一人で座っていることにも、メニューもない地元の人向けのトルコ料理屋にいることにも、もう全然違和感を感じてないのに気づいたのであった。
ふと 「最初の夜はひとりで外に出て歩くのがこわかったんだよな」 と思いだす。あれは、確か一週間前のことだった。わずかの期間で、何で自分がこんなにこの国の雰囲気になじんでしまったのかあらためて考えるが、答えが見つからない。が、その瞬間、どうもそういう魅力がある国だということだけは、はっきりとわかった。トルコは。
と言いつつ、その翌日には成田へと飛ぶ飛行機に乗り込まなければならないことも、ふとトルコ料理屋の店先に座りつつ思い出したりするのであった。