それは、サウジアラビアからサーレフ博士という方が来日されたことがきっかけであった。
そしてその際、自分が東京を案内することになった。そのサーレフ博士こそが、今回、サウジアラビアで開催された会議を主催する当事者なのである。その際、流れで、まあ是非ともその会議に参加してくださいという発言があり、そういうことなら是非参加させていただきましょう、ということになったわけなのだ。
というわけでサウジアラビアへ行くことになったら、次に何をすべきか ?
ビザの取得である。
つまり、日本人がサウジアラビアへ行くにはビザが必要である。しかし、まあ短期訪問ビザの取得くらいはたいした問題ではあるまいと甘く見ていた。なにしろ、今回のサウジ行きの目的は、サウジアラビア政府主催の国際会議なのだ。その招待状もある。その招待状をもってサウジアラビア大使館へ行って、パスポートを提出して、簡単な手続きをすれよいだろう、と軽く考えていたのである。
しかし、さように甘いものではなかった …
そもそもサウジアラビアという国は、例えば、非イスラム外国人の個人旅行のためのビザ取得というのが事実上不可能なほど、ビザ取得が難しい国であるということを知らなかったのである。
サウジアラビア政府の招待状があるくらいでは、ぜんぜん駄目なのだ。
ビザ取得に必要ないろいろ書類が指定されているのだが、その中には 「日本の商工会議所が承認した推薦状」 というものまである。さらに必要書類が全部あるとしても、ビザの申請は個人ではできない。つまり、サウジアラビア政府が認めた資格のあるエージェントを通さないとビザの申請ができないのである。
というわけで …
必要とされるいろいろな書類をかき集めて、パスポートを添えてサウジ政府認定代理店経由でサウジアラビア大使館に提出したのである。
それで一安心 … と思ったら、そうはいかない。
エージェントから連絡が入り、いまは、イスラムの教えにより、サウジアラビア国は神聖なる休息期間中であることがわかった、とのこと。それはつまり、ビザを発行すべき、在日本サウジアラビア大使館も休息しているということである。それやこれやで、ビザのスタンプの押してあるパスポートが戻ってきたのは、実に出発の二日前というきわどいタイミングであった。
さてそれと並行して航空券の手配をする。
サウジアラビアはアジアかヨーロッパか ? といえば、アジア地域ということになるだろう。地理的にヨーロッパよりかなり近いはずである。成田空港からサウジアラビア行きの飛行機に乗ってくつろいでいると、ヨーロッパに行く時間の半分くらいの時間でサウジアラビアの空港に到着、というようなイメージである。
しかし、さように甘いものではなかった …
まず直行便はない。
また出発日にもよるのだが、乗り換え便もなかなか良いルートがない。旅行会社にいくつかオプションを提案してもらったのだが、そのなかにはフランスの首都、パリのシャルル・ドゴール空港までエールフランスでまず行って、そこで乗換えてサウジに向かいなさいなんていうルートも現実的なオプションであったくらいだ。
種々検討の結果、結局、それが一番安いという極めて説得力のある理由で、航空会社はキャセイを選択する。しかしそれは、二回の乗り換えを要するルートである。そして、出発から到着までの所用時間は、なんと 19 時間なのであった。
ヨーロッパへ行くよりよほど大変なのだ。
というわけで成田空港を飛び立つ。そして 19 時間。香港とバーレーンの空港にそれぞれ着陸してはまた離陸して、ようやくサウジアラビアの首都、リアド空港に到着することができたのだった …