グラナダを出て 「白い町」 と呼ばれる観光地、ミハスに立ち寄った後、スペインの最南端にあたる、アルヘシラスという港へと到着する。
この港町は、ジブラルタル海峡を横断してアフリカ大陸へと渡るフェリーが発着することで有名。地理的にアフリカ大陸までわずか 30km という至近距離なのだ。
というわけで、とりあえずはアルヘシラスのシンボルとも言うべき港を見学することにする。港の近くへ行き路上駐車のスペースを探していると、小柄なおっさんがそれを察したらしく 「ここに駐車スペースがあるぞ」 という感じで手招きしてくれた。首尾良くその場所にクルマを停め、礼を言って立ち去ろうとすると、どうもそういうものではないらしい。
「駐車料金をくれ」 と言うではないか。
「何で、公道にクルマを停めるのに、あんたに駐車料金を払う必要があるのだ ? 」 というと、そのおっさんが言うことには …
「君は旅行者だから知らないだろうが、このあたりには悪いヤツが多い。クルマにキズをつけられてしまう事件が最近多いのだよ。しかし君はラッキーだった。オレに少しカネを払えば OK だから。ここでオレがクルマを見ていて悪いヤツが来たら追っ払ってやるから」
これは実に鋭い論理展開であり、ひしひしと説得力を感じた。要するにカネを払わないと、このオトコが自らコイン片手の 「悪いヤツ」 に早変わりしてしまうというのが火を見るより明らかではないか。時間もないし、ここではない別の場所に停めたとしても、何かの拍子にそれがうっかり見つかれば何をされるかわからない。
というわけで、向こうは 2000 円、こちらは 100 円から、路上駐車料金の交渉が始まった。が、結局は 700 円で手を打つことにする。
約一時間後、港を見学して出てくると、クルマを見張っているはずのこのオトコはもちろんどこかに行ってしまっていなかった。どうも心配な気分なので、その後は、ホテルの地下の駐車場にクルマを停めておくことにする。