さてこの旅の最後の三日間は、どんどんとばしながら書いてしまおう。というのも、このあたりでスペインと別れを告げて、フランス、ベルギー、オランダを経由して、あとはドイツへと帰るだけなのだ。しかし、ハンブルグまではまだ 2450km ある。そしてあと休みは三日間しかない。
三日間で 2450km 走破という数字自体は、まあ何とかなるか ? というものだが、ひとつ別の問題がある。このあたりは高速道路がないのだ。つまり、その中のかなりの距離、一般道を走る必要があるということだ。
さて旅の 16日め。この日は 850km 走破して、フランスの国境を越える。実に、その中の 700km が一般道である。一般道を乗り切るだけで約 14 時間のドライブとなる。観光はまったくなし。なしといったらなし。しかし、その途中、スペインのイベリア半島を出るあたりで、車窓から見える周囲の風景が、イベリア半島特有の荒涼たる赤茶色から、フランスらしい緑と青の水々しい色へと変貌するのを実感することができた。
へんな言い方だが 「ヨーロッパへ帰ってきた」 と思う。
ボルドーという、ワインで有名な街で宿泊。
その翌日は、900km のドライブ。フランスから、ベルギーの国境を越えてゲントという街へ。到着後、まずは宿を探すのだが、ここでは実に 12 件のホテルを回っても空き部屋が見つからないという経験をすることになった。おそらく何かのイベントと偶然にかちあってしまったとしか思えないが、それが何か今にいたるまで謎である。
こういう場合、8 件めあたりから、探すホテルの値段の許容幅がぐぐっと上下に大きく広がるのである。これでも本当にホテル ? というところを断られて、次に、たまたま目についたというだけで超高級ホテルのロビーに入っていったりする。そうして 13 件めでやっと見つけた空き部屋のあるホテルは、意に反して非常に立派なところであった。が、もはや選択の余地はない。
この旅の最後の晩は、思いがけず、なんと控えの間まである部屋に豪華に宿泊するのであった。