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Reports
旅日記


Story of 21 December

今回は英国をめざす旅

この日の夕方、フランスからドーバー海峡をわたるフェリーにのった …

そして、イングランドの南東部、ラムスゲイトという町の灯が見えるあたりまで、海をわたってきたころにはすっかりあたりは暗くなっていた。

「英国」 というか 「イギリス」 というか、はたまた 「グレートブリテン」 というか 「UK」 というか、いろいろなよび方がある国ではあるが、この国に思い入れのある方はけっこう多いと思う。

英国ブリテン島に行きたい ! という方は多いのではないだろうか。おそらく淡路島よりは。まあイタリアとは違い、今回はグルメの方にはあまり関係ないかもしれないが …

しかし、行かねばなるまい !

そして、ここでは、その一部始終において見聞したあれこれの中から、有益な情報はいっさい排除し、まったく、ぜんぜん何も役に立たない取るに足らぬエポックのみを厳選し、写真つきでまとめたレポートを紹介しております。そして、この物語のはじまりは、旅の出発地、筆者のアパート (当時) の所在地であったハンブルグとなります。

いよいよ、ドーバー海峡を渡って英国へ

さて、そういうわけで、Audi 大征服号で、ドイツのハンブルグのアパートを出発するという次第になった。

そして、700km あまりの道のりを一気に走り抜けて、ドーバー海峡に面した、フランスのダンケルクという港へと到着。ここでドーバー海峡を渡るフェリーにクルマごと乗り込むのである。

そして、のんびりと海を眺めていたというわけだ。

日付はクリスマスイブの三日前、12 月 21 日であった。フェリーが出港したのは夕方の四時半。到着する頃には夕闇を迎えていた。

さて、そういうわけでフェリーが英国のラムスゲイト港に到着する。思えば、欧州大陸生まれのこのクルマにとってははじめての英国ブリテン島上陸である。船からおりてパスコントロールと税関のゲートをくぐり、一般道に出る道を走っていると、ありました、でーんと大きな標識が。

見ると 「Drive on the Left」 それも三ヶ国語で。

わかるなあ。左側を走れという標識を立てたい気持ち。右側通行のヨーロッパ大陸から走ってきて、ついつい右側を走るやつがたぶん大勢いるんだろう。と思う間もなく、またまた大きな標識。それもひとつではない。

次々と 「Drive on the Left」「Drive on the Left」「Drive on the Left」の連打。

そういうわけで港から一般道へ出る。一般道に出るところで 「Way Out」 カンバンの上に、最後のとどめにおいてある 「Drive on the Left」 の三ヶ国語の標識を見るのであった。

英国の道路へ出る直前の標識

それにしても一時間半くらいのフェリーで海を渡ったら、それまでクルマは右側通行だったのが、いきなり左側通行になってしまう。急に道路の反対側を走らねばならないのである。ハンドルをにぎるドライバーにとっては、なんとも違和感の大きいシステムだと言わざるを得ない。

と、思ったのもつかのま。

英国流に道路の左側を走るのには、ものの十分ほどでなれてしまい、そのあとはもうそれが当然というか、それでなければおかしい ! というくらいになじんでしまった。この日、ここに来るまでの分だけでも、ドイツからフランスまで 700km も右側通行のドライブをしてきたはずなのだが。

やはり日本人。

さて、ラムスゲイトの港から市街地へとクルマを走らす。もうすっかりあたりは暗くなってしまっており、この日は、記念すべき初上陸地点であるラムスゲイトの港町で泊まることにする。

さて、英国上陸初日である。英国に来たら必ず食するべきエンギモノと言われている (言われていないか ? ) フィッシュ・アンド・チップスを、まずは食べることにする。これはまあ、英国を旅する者にとってのお約束ないしノルマである。そして、近くにあった B&B (民宿) のベッドへともぐり込むのであった。


Story of 22 December

英国の B&B について

朝、目を覚ましてみると英国の B&B である。まああたりまえか。

さて英国の B&B とは 「ヘッド・アンド・ブレックファースト」 の略である。ホテルとは違って、一般の家を少し改造したくらいの宿で、オーナーのおじさんおばさんとの人間的なふれあいがあり、英国人の生活の一端を感じられるのがなかなかよろしい。

また朝は宿のおかみさんが、手作りの純英国家庭風の朝食を出してくれるのも、B&B の楽しみのひとつだと思う。

英国の朝食。トーストは三角でトマトは必ず焼いてある

この朝も、顔を洗って着替えて朝食を取りにダイニングルームへおりていくと小柄な英国人のおばさんが待っていてくれた。「さあさあ昨晩のお客さんはあんただけだったんだよ」 とのこと。こっちへ来て朝食でもどうかいという、そんな感じで話し始めたのがきっかけで、朝食のあいだこの話好きの英国人のおばさんとずっと話しこむこととなった。

眼の前に座っている英国人のおばさんに、今朝の朝食の感想に聞かれる。 「おいしいですよ。ところで英国では焼いたトマトを必ず出しますね。私の国ではトマトはふつう生で食べるのでたいへん印象的です」 などと答える。そのあたりから日英朝食談義になった。「お国はどこ ? 」 というので、日本人だと答えたら、日本の B&B の朝食はどういうものか教えてくれない ? という。

ここは正しい伝統的な日本の朝食をキチンと説明せねばなるまい、と思う。

そうですねまず最初の特徴として、トラディショナルなジャパニーズ・スタイルの B&B (民宿 ? ) ではブレックファーストにはパンではなく、必ずライスを出します、というと 「ほおお、ブレッドを食べない ? で、その代わりにライス ? 」 と興味を示してくれた。

しかし次に、ミソというソイビーンズ (大豆) のペーストで味つけをした暖かいスープも必ず … と言ったあたりからどうもおかしくなった。 「暖かいビーンズのスープ ? を飲むの ? 朝から ? 」 と言ったきり表情が曇ってしまったのである。

明らかにこちらの思い描いている伝統的和風味噌汁のイメージと、向こうのアタマにある 「ソイビーンズのスープ」 のイメージがずれてしまったようだ。大皿になみなみと注がれた何かとてつもなくリッチなビーンズのスープを朝からすすらなくてはならない日本人を想像して、同情の念を禁じ得ないようすである。しかし、圧倒的な文化の違いからくる誤解を慣れない英語でうまく説明するのは難しい。

「それで ? 」 と言うので、しかたなく次を説明する。

「それにフィッシュの料理をつけます」

しかしそこでかの英国婦人しばし絶句。

「あ、あさからスープを飲むの ? そのあと、フィッシュのメインディッシュを食べるの ? オー、アンビリーバブル ! 」 とのこと。こちらも多少うろたえる。

これは、明らかに誤解である。

コース料理のように、まずミソのスープを飲み、それが終わったところで、おもむろにフィッシュ料理を食する、というように理解されてしまったのだ。しかし、どのように説明すれば、それが誤解だとわかってもらえるのだろうか。

それに、イングランドの田舎町でフィッシュを食べる、などというと脂ぎったでかいフライしか思い浮かばないのかもしれない。朝、スープ皿になみなみと注がれたリッチなスープを食したあとに、そのようなモノが出てくる … というのは、確かに想像を絶するものがある。

そこで、フィッシュといっても小さいもので、オイルを使わずに網で焼いたりして調理するからライトなテイストなんですよ、などとフォローしたがどうも聞く耳をもたないようすである。

しかたないので、もうやけになってどんどん説明を続ける。 「エッグは食べないの ? 」 というので 「日本ではエッグは生で食べます」 ときっぱり説明 !

「エッグ ? を生で ? おお ! おお ! なんてことでしょう ! 他に ? 」 「大豆を発酵させたナットーというビーンズの料理とか」 「大豆を発酵 ? 発酵 (fermentation) って言ったの ? 他に ? 」 「あと黒い紙のようなフードもあります。ノリという、えーと黒い色の海草ですね。それがマテリアルです。それを紙のように成型します。」

「 ! ! ! 」(絶句)

結局 「日本の B&B のお客さんは気の毒だねえ。毎日そんなものを食べるのかい。インブリッシュ・ブレックファーストの方がぜったいおいしいよ」 というのが彼女なりの結論になったようである。適当にあいづちをうっていたら、すっかりこの朝食に関する日英会談の合意事項は、日本の伝統的な朝めしよりイングリッシュ・ブレックファーストの方がだんぜん美味いということになってしまったようである。不本意な気もするがしかたない。

朝食によらず、日本の極めて伝統的なものごとを英語で、その魅力が伝わるように説明するのは難しいなあと痛感する。

さてこの日は英国の右下のあたりにあるラムスゲイトを出発し西へクルマを走らせる。近くに 「ハートフィールド」 という小さな村があるので、まずはそこへ向かうのである。

ブリテン島南岸を西へ。バックはドーバーの港


Story of 22 December, cont.

Winnie-the-Pooh !

さて 「ハートフィールド」 のハナシである。

ハートフィールドというのは、英国の典型的かつトラディショナルな田舎町をよく保存してあることでも知られていて、もうそれだけでもかなりオススメできるスポットなのだ。

しかし。

それよりずっと重要なことがある。この町は、かの 「プー」 の故郷なのだ。つまり 「くまのプーさん」 の作者である A.A. ミルン はこの町の住人であり、プーの物語を書くにあたってもこのあたりの風景をモチーフにしたというわけなのだ。

ひとつだけ補足すると、ディズニー映画の (ややアメリカナイズされた) 「くまのプーさん」 がカワイイ ! 思う方は、むしろここではなくディズニーランドに行くほうがよろしかろうと思う。

そうではなく、イングランドの香り高き原作 Winnie-the-Pooh を愛するファンにとっては、このハートフィールドこそが、必ず訪れるべき 「聖地」 なのである。

最寄りのイーストグリンステッドという鉄道の駅から 12km ほどあり、そこを走るバスが一時間に一本で、しかも日曜日には運休という交通の便のわるさだけは大きな難点ではあるが。ただしそのおかげで必要以上の観光地化をまぬがれている。

ハートフィールドの 「プー・コーナー」 のお店

ハートフィールドを訪れた後、この日は、英国南岸の大学の街、サザンプトンまで行って泊まることにする。

さて英国では、手頃な料金の B&B が街道沿いに点在していて、安く泊まるところを探すのに全く困らない。この英国大征服旅行のころの相場は、宿泊+朝食で 12 〜 16 ポンド、夕食つきで 16 〜 20 ポンドというところであった。

しかしこのサザンプトンだけは、なぜか B&B が見あたらない。普通なら 15 分もクルマを走らせれば手頃そうな B&B が三軒くらいは見つかるのだが、一時間くらい市内をぐるぐるまわっても、どうにも見つからない状態である。もう時間も遅いし、しかたなく、市内でいくつか見つけた普通のホテルのどれかに泊まることにする。

閑話休題。

ところで、旅行は基本的には食べるものも泊まるところも安いのをもってよしとするポリシーである。

旅行中は非常にラフな、学生のようなかっこうをしているし、だいたい日本人は外国では若く見られることが多い。そして、その日本人同世代のなかでも若く見られるほうである。もちろん本当はドイツに住む社会人であり、アメックスのカードをふだん出張などに使っていたら、是非アメックスのゴールドカードを ! という手紙が来て、どんなものか一応見てみようと言うことで申し込んだので、ポケットにはアメックスのゴールドカードをもっていたりした。

さて話は戻る。サザンプトンの ★ 二つのエリザベスホテルに入って値段を聞いてみると 「シングルで 36 ポンド」 とのこと。やはり ★ 二つとはいえ、ホンモノのホテルはそれなりに高い。B&B なら夕食つきで 16 ポンドくらいからあるのに。

「もっと安い部屋を探しているんですが … 安い部屋はないの ? 」 と、ラフな格好をして実際より若く見られることが多いのを良いことに部屋代を値切ってみる。パーキングの様子から見て、他に客はあまりいなさそうだし。すると、ホテルのフロントの女性が、人の風采をじろじろ見てから少し気の毒そうに 「そうねえ。じゃ 32 ポンドでいいから」 とのこと。

実は、問題は、手持ちのポンドの現金があまりないことなのであった。それもあって安いところを探していたのだ。しかし 「カードでも良いですか ? 」 というと、もちろん OK とのこと。まあ、こういうところはちゃんとしたホテルの良いところではある。ということで、そこで宿を取ることにする。

そこでホテルのお姉さんに、じゃあカードを見せてよと言われてはじめて思い当たった。

出すべきカードはアメックスのゴールドしかないのである !

かのフロントの女性、差し出された、さんぜんと黄金色に輝くカードの表裏をじっくり見て、こちらの顔と見比べる。しまいにはあなたそこにサインしてみてと言う。カードと同じサインをして問題はないことになったが、どうも腑に落ちないようすであった。

これがその 「☆☆」 のホテル

というところで Report No.2 へと続くのであった …